2010年11月22日月曜日

復帰で証券界が色めく「芸能人銘柄」

株式市場で一風変わった理由から注目を集めている銘柄がある。東証1部上場の化学機械メーカー、巴工業(東京)。筆頭株主の元歌手、佐良直美(65)が「27年ぶりに歌手として再デビューすることが決まったことが話題になり、ご祝儀相場になる」(証券関係者)と期待されている。

 証券界が色めき立ったのは、9月下旬のスポーツ紙の報道。佐良が27年ぶりに新曲「いのちの木陰」(11月24日発売)を出し、芸能界に復帰すると報じた。

 華々しい経歴を持つ佐良は1969年、「いいじゃないの幸せならば」で第11回日本レコード大賞を受賞。NHK紅白歌合戦の紅組司会を5回務めるなど国民的歌手として知られたが、スキャンダルで80年代後半に芸能界から姿を消した。

 現在は栃木県那須塩原市(旧黒磯市)で、家庭犬のしつけ教室「アニマルファンスィアーズクラブ」を主宰している。

 往年の国民的歌手の再デビューに、ビジネスチャンスとソロバンを弾いたのが証券界だ。巴工業の筆頭株主である佐良の再デビューは、同社株の買い材料になると見なしたからだ。

 もっとも、佐良は同社株を市場などから買い占めて筆頭株主になったわけではない。

 「巴工業の創業者である山口四郎氏は、佐良さんの母方の祖父。その四郎氏は日本ヨット界の功労者として知られています。四郎氏が所有していた『天山』というヨットを、石原慎太郎氏の仲介で森繁久彌氏が購入したのは有名な話」(財界関係者)

 巴工業の大株主には創業者一族が名を連ねているが、佐良は76万4000株(発行済み株式の7・26%)を保有する筆頭株主だ。

 その巴工業は、デカンター型遠心分離機で5割のシェアをもつ化学機械メーカー。2010年10月期の売上高は391億円、最終利益は13億円を見込む。1株配当は5円増配して35円を予定しており、10月26日の株価は終値で1172円。しっかりした優良会社だ。

 佐良の持ち株の時価総額(保有株式数×株価)は8億9540万円。配当金は2674万円を受け取る計算で、リッチな投資家という「別の顔」を持つ。

 「佐良ファンだった年配者は少なくない。11月発売の再デビュー曲がヒットすれば、巴工業の株価がご祝儀相場で上昇することが期待されています」(証券関係者)

★みのもんたも上場企業の大株主 
 上場企業の「有名人」大株主といえば、世界一忙しい司会者で知られるみのもんた(本名・御法川法男)(66)が有名。東証1部上場の水道メーター製造大手、愛知時計電機(愛知)の第2位の大株主だ。

 みの個人で保有している株式数は346万9000株(発行済み株式数の7・41%)。10月26日の株価226円で計算すれば、持ち株の時価総額は7億8399万円に達する。10年3月期には1株7円の配当があったので、受け取った配当金は2428万円に上る。

 みの自身は水道メーター製造会社ニッコク(東京)の社長でもある。同社は、父親から受け継いだ家業の日国工業にオフィスモンタ(みのの個人事務所)を吸収合併して誕生した。

 本名の御法川法男名義で、愛知時計電機株を買い占めて第2位の大株主に躍り出たのは05年3月のこと。父親で、ニッコク会長だった御法川正男氏が92歳で亡くなった直後だった。

 当時は、ライバルである愛知時計電機の株式を買い占めたことで、「みのもんたによるライバルの乗っ取りか」と騒がれた。お茶の間の人気司会者とは違った、別の顔がそこにはある。