「MSCIショック」が東京株式市場を襲った。世界の機関投資家が運用の指標にする「MSCI標準指数」から除外される日本株20銘柄が売り込まれたのだ。東日本大震災や原発事故後の株安が直接の要因だが、市場関係者は「“元凶”はほかにある」と指摘する。
MSCIは米国の指数算出会社の最古参で、名称は「モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル」の略称。世界の主要銘柄で構成されるMSCI標準指数は、世界中の投資のプロが運用成績の善しあしを計るベンチマーク(指標)として利用されている。MSCIをベンチマークとした運用資金は約4兆ドル(約320兆円)で、このうち日本株の比率は9%弱、28兆円前後とされる。
構成銘柄は四半期ベースで定期的に見直されるが、日本時間17日の見直しで、一気に20銘柄が除外された。すると17日の東京市場でこの20銘柄の大半が急落したのだ。
みずほ証券エクイティストラテジストの瀬川剛氏は「除外された銘柄は海外投資家の投資対象に選ばれなくなる可能性があるという観測から17日に先回りした売りが出た。実際に除外が実施される31日にも売られる場面があるだろう」と解説する。
一方で、今回の株価急落は、投資家にとってはチャンスとの見方もある。瀬川氏は続ける。
「除外された銘柄は、それぞれの会社の経営がだめだとか財務的に問題があると判断されたのではなく、時価総額などで機械的に選ばれたもの。株価への影響は一時的で、今後の業績次第で上昇が見込めるし、MSCIに再エントリーする可能性も十分にある」
ただ、日本株全体が伸び悩んでいるのも事実だ。今回の20銘柄除外は東日本大震災による株価下落が直接的な要因とされているが、実はより根本的な問題があるという。別の市場関係者が明かす。
「欧米の株価はリーマン・ショック前の水準まで回復したのに日本株は戻っておらず、MSCIも日本株のウエートを下げざるを得なかったというのが今回の真相。そして09年夏の政権交代以降、世界と日本株の差が一段と大きくなっている。実は震災や原発事故の影響は短期的だが、政治の混迷が続くのであれば、さらに差が広がる」